■■■ 九龍ED ■■■
RL:あの大騒ぎから少し経って――キミの新作映画はまずまずの滑り出しを見せていた。
九龍大公:「な、なんだってー!?」
プロデューサー:「く、クリュウさん!? 売れちゃうよ!? 売れちゃうよ!!??」
九龍大公:「フッフッフーー。今回は何故か役者が光り輝いているからな。こりゃもう、バカ売れ路線だな!!」
RL:「……この『狼人間VSクローン軍団』は、
九龍監督久しぶりの本格アクションであり……」
などと映画誌でも絶賛を受けている。
行きつけのバーのママ:「なによぉ、九龍ちゃん。マトモなの作れるんじゃなーい。見損なっちゃったわぁ(爆)」
(プロデューサー:N◎VAに映倫あるんだろか)
(平和男:N◎VAにあるのは表現の自由(暴露)と、公共の福祉(完全擬装))
RL:「……が、監督本人は”ドキュメンタリーである”などと言い張っており、
相変わらず発言に不誠実な点が多く、残念ながらアカデミー賞には……」
九龍大公:「待て、落ち着け。コレは実際にあった出来事なんだ!」
九龍大公:「そうじゃなきゃ……ってオイ待て何だその生温い目は! 私は九龍大公だぞーー!」(フェードアウト)
助監督:_______劇☆終_______
助監督:NG集
助監督:「ひでぇ、一撃だ」(棒読み口調)
観客:( ̄□ ̄)
■■■ 平ED ■■■
RL:「――あのウツダ軍団、偽者だったんですって?
残念ね、彼を挙げられなくて」
……と、課長はキミをねぎらってくれるよ。
平和男:そんな課長のセリフを愛そう笑いで流して、俺はワイルドゴートを走らせる。
平和男:まぁ、宇津田のところにでも行こう。
宇津田篠雨:俺は──何処かの廃ビルを不法占拠して、傷の手当てをしているだろうな。
宇津田篠雨:今回は派手にやられすぎた。
平和男:そのビルの前にワイルドゴートが止まるわけだ。
平和男:で、崩れ落ちた入り口の瓦礫を踏み分けて、イヌが入ってくる。
宇津田篠雨:珍客に顔を上げよう。「……あれから何もしていないぞ」
平和男:「今のところは、だろ?」ポケットロンを開いて、文書を確認。
平和男:「今回の件について、BHが下した裁定だ」
宇津田篠雨:む……
平和男:「100人殺しはシャドウと呼ばれる別人が行ったことが判明」
平和男:「スラム街での一見は互いにXランク、加えて正当防衛のセンが高い」
平和男:「タンカーにおいては、科学者一名が心神喪失状態にあったが──」
平和男:「──お前が手を下した形跡はなく、シャドウ自身は死亡確認も生存確認も取れていない」
平和男:「従って、現在の時点でブラックハウンドがお前を逮捕する要件は1つも存在しない、とよ」《制裁》[無罪]
宇津田篠雨:「……借りが、出来たな」
宇津田篠雨:「それとも、殺し屋への貸しなどいらないか?」
平和男:「資産価値に照らし合わせられない貸し借りなんてものはな、受け取った側が感じていればそれでいいんだよ」
宇津田篠雨:それは、納得するしかない。
平和男:「それとこいつは――」ウィスキーボトルを取り出す。
宇津田篠雨:「???」
平和男:「犯人逮捕に協力した身元不明のXランクに、是非、と一般市民から──」
平和男:<売買>、ダイヤの7。
平和男:「――匿名で寄せられた品だ」
宇津田篠雨:「──匿名か、なるほど」
宇津田篠雨:「では俺も匿名で、真相究明に尽力した捜査官に、一杯おごらせてもらうとしよう」
宇津田篠雨:その辺から煤けたコップを二つほど取り出して前に置く。
宇津田篠雨:「便利だな、名前も立場も気にしなくてよいというのは」
平和男:返事も返さずに、座り込みながら蓋を開けて、注ごう。
RL:では、不思議な殺し屋と警官が”マッド・リキュール・パーティ”を開いた所で、このシーンは終了といこうか。
■■■ 宇津田ED ■■■
RL:さらにまた別の時、別の場所――ここはモスクワ。
マロースの夜……赤の広場で、ウツダはチェチェンマフィアの刺客達と死闘を繰り広げていた。
飛び散った血が瞬く間に凍り、体温を失っていく肉体はすぐに雪に埋もれる――
「×××!」
ロシア語で呪いの言葉が吐きかけられる。きっと糞ッタレとか、死んじまえとかいう意味だ。
宇津田篠雨:空虚だ……などと思いながら、構えもせず立ち尽くしている。
RL:周囲を取り囲むチェチェン人たち。
その輪の間から、独りの男がずいっと割って出てくる。
「×××シャドウ×××!!!」
(ロシア語の中に、別の言葉が入ったように聞こえた――)
割って出た男は、顔に十字の傷を持ち、キミを前に全くひるむ様子を見せない。
宇津田篠雨:カタナを振って、雪の上に血の跡を落とす。十字傷から殺気は感じるか?
RL:「Здравствуйте! 一振りのカタナとして――手合わせ願いたい」
そいつは刃を抜きにし、キミに向かって切りかかろる。
だが、その顔はどこか、兄弟にでも会ったかのような笑みを浮かべていたのだ――
宇津田篠雨:雪にくすんでた眼に光がともる。抜き身の刀の輝きだ。あとは言葉は要らない。
RL:では、剣戟の音が吹雪にかき消され──白くなっていく画面にスタッフロールが流れて、END。