第七話 僕にガイアを外せと言うのか


 マントラ軍本営ビルを後にした俺は、ギンザのニヒロ機構へ向かうことに決めた。
 結果的にゴズテンノウの思惑通りになってしまうのかもしれないが、元々一人ではニヒロ機構の門をくぐることすら叶わないのだから仕方がない。
 マントラ軍が攻め込むのに乗じれば中に入れるのだし、氷川のとばっちりが祐子先生に及ぶのを見過ごすわけにはいかない。
 まあ、あの先生は望んで加担しているのだろうから俺が心配する必要は無いと思うけど……勇に恨まれそうだしな。

 ニヒロ侵攻の準備として、邪教の館で新たな仲魔と契約を結ぶ。コッパテングを材料に見覚えの成長を覚えさせたディースだ。
 どうも今のスタメンはボケしかいないので、突っ込み系が必要だと思い採用してみた。マント姿の物静かな淑女で、騒がしいアメノウズメとは大違い。これからの活躍に期待できる。
 ……でも何でいつも目を閉じているんだ? 開いて見せてくれと頼んだら、ペトラアイを食らった。即石化する俺。ペトラディをかけてもらわなかったら危うく全滅するところだ。アラハバキといい、悪魔の目は怖い。あまり怒らせないようにしよう。

 ターミナルへ向かう前に野暮用も済ませておく。西館に見慣れぬ悪魔が出たという話を聞いたので、これの退治である。留守にしている間に暴れられても困るしな。

 現地に向かうと、ギンザ大地下道であったように、突如異界へと引きずり込まれた。
 そこで待っていたのは「だいそうじょう」なる魔人。座す僧侶の姿をした髑髏顔で、見た目も大地下道のマタドールにそっくりだ。どうやらこいつらは俺の持っている燭台──メノラーを狙っているらしい。

 だいそうじょうは俺の苦手とする呪殺・破魔・精神系の魔法を唱えてくるイヤラシイ相手だった。性格もやらしい。いちいち人の後ろに回って喋られるのは非常に不快だし、要約「死んだ方がイイヨ」とか言われて非常に鬱だ。
 仲魔も精神力を吸い取られて厳しい戦いとなったが、新規参入したディースの防御魔法・テトラジャによって勝利を収めることが出来た。魔人はやはりマタドールと同じように燭台を持っており、これでメノラーは王国、永遠、基礎の3本になった。
 いい加減かさばるんだよな、コレ……こんな両手で抱えないと持ち運べないようなものを何本も持たされても困る。アマラ深界の喪服女は「メノラーが俺を導く」とか言っていたが、厄介ごとを呼び込んでいるだけじゃないのか? 文句を言いに行きたいところだ。しかし今はギンザに行くのが先決、それはニヒロの件を片付けてからにするか。


〜ギンザ→ニヒロ機構〜

 ギンザに到着した俺は、わき目も振らず南西へ。シオドメのニヒロ機構に向かう。円形のドーム状の建造物で、以前は硬く閉ざされた扉を前に引き返すしかなかったのだが、既に出入口はマントラの軍勢によって破られた後だった。やけに静かなのが嫌な予感を増大させるが、祐子先生の安全を確かめないわけには行かないので、奥へと歩を進める。

 ニヒロ機構の内部は、青白い光に照らされた無機質な空間だった。壁面も廊下も無駄の無い曲線のみで構成されていて、直線的なマントラの内装とは対照的である。あちらは武家屋敷然としたデザインだったけど、ニヒロはまるで宇宙船の中だな。不謹慎にも、個性が出ていて面白いと思ってしまう。

 あちこち歩き回ると、どの部屋も既にマントラ軍に占拠されていた。いたるところに戦闘と破壊の痕跡があり、宝箱の中身もすっかり持ち出されている。当のマントラ兵士達は「あっさり陥落したぜ」と大威張りだ。……でも、おかしいぞ。オニ達の話には肝心の氷川と先生の話は全く出てこないのだ。ニヒロ機構が敗北したというなら、二人は一体何処にいったんだ?


〜ニヒロ機構・中枢部?〜

 先生の手がかりを求めて、中枢部へとやって来た。天井が高く吹きぬけた、広々とした円形の部屋。その中心で奇妙なモニュメントが静かな駆動音を立てている。よく観察してみると、ターミナルに良く似た筒状の装置がいくつも連なって、この建物を上下に貫いているのが分かる。その表面をゆるゆる滑り落ちていく赤い光……あれは、マガツヒか? アマラ経路で見たものにそっくりだから、間違いないだろう。

 装置はマガツヒの流れに干渉しているように見える。中枢まで占拠されたというなら、何故動作が止まらないのだろう。不思議に思い、根元にある制御室らしき部屋を覗き込んだ。すると中には人影が……


 ……見間違いだ。一旦部屋を出て、もう一度入りなおす。


某記者「何だよ、お前か」


 それはこっちの台詞だ!! 人影の正体は、シブヤで別れたジャーナリスト、ヒジリのおっさんだった。何でこんなところにいるんだ。勇といい、千晶といい、お前等のフットワークはどう考えてもおかしい。 俺がどれだけ苦労して潜入できたと思っているんだ。

 あからさまに不審がっているのに気づいたのか、ヒジリは事の経緯を話し始めた。どうやらヒジリが到着した頃にタイミング良く襲撃が始まったので、その混乱に乗じて潜入したのだとか。何だその剛運。そもそもどうやって無傷でここまで辿り着いたのか問い詰めたい。

 ──そういえば、こいつはターミナルを操作するのが得意だったな。俺が二本の足でトウキョウを歩き回っている間に、ぴょんぴょんとワープしてきたと言うわけだ。なるほど。

 俺は仮にも悪魔なのに、ちっとも得をしている気がしない。何だろうこのやるせなさは。鬱だ。

 しかしヒジリは大体の事情を把握しているらしい。アテを失った今、彼の話は重要な情報源になる。色々言いたい事はあるが腹の底に収めて、俺は聞きに徹する事にした。


〜ニヒロ機構 マガツヒ貯蔵庫〜

 マガツヒが絶え間なく流れる貯蔵庫を、ひたすらに駆ける。中枢部への鍵、キーラを求めて。

 ……ヒジリに頼ったのは正解だと思った。俺達が中枢部だと思っていた部屋は、巧妙に偽装されたダミーだったのだ。それを、あいつは見抜いていた。
 マントラの兵士達はニヒロ機構を完全に掌握したと思い込んでいるが、それすらも氷川の筋書き通りだったのだ。総司令や巫女が身をおく本当の中枢は、別に存在する。
 そういえばオニの一人が「中枢に入るにはキーラを手に入れなければ云々」と言っていた。
 かくして今俺は、中枢への道を開くため「キーラ」を探しているのだった。

 ヒジリはと言うと、途中で起こった大きな地響に身の危険を感じたらしい。「俺はこれ以上無理のようだ」と言い残して、そのまま立ち去ってしまった。……そんなところだけ人間じみているのはどうかと思う。シブヤの時も同じこと言っていた記憶があるが、しっかりこんな所まで潜り込んでるじゃないかと。

 さて、ニヒロの悪魔を数体撃破し、三本のキーラを台座に納める事に成功する。残り一本を同じように嵌め込めば、道が開けるはずだ。
 が、困ったことに残った一本を変な悪魔に持ち逃げされてしまった。
 犯人は巨大な人面ヒトデの様なバケモノで、夜魔キウンと名乗るキモイ奴だ。
 貯蔵庫のパズルを解いている最中にスイッチを勝手に動かすわ、大事なキーラを盗んでとんずらするわ、ロクな事をしない。
 ニヒロの悪魔は搦め手が得意だとは聞いているが、これは搦め手というより只の嫌がらせだと思う。あんまり頭良さそうな顔してないしな、アイツ。見つけたらあのデカイ顔面をサンドバッグにしてやる。

ディース「ウツダ様、相手をなめてかかる前に我が振りを直した方がよろしいかと。
     まさかガイアを装着したままキウンと一戦交えるつもりではありませんわね?
     き奴めは強力な呪殺の使い手でしてよ?」

 図星。

アラハバキ「哀れであることよ。
      我はその点、物理・破魔・呪殺、全てに耐性があるからして、
      些細な悩みとは無縁也」

 お前はその他全部弱点だろうが! ……と突っ込みたいのはやまやまだが、物理無効の奴には実力行使は無意味である。くっ、これがボケ殺しと言う奴か。耐性:突っ込み無効。ヤバイ、強力すぎる。

 しかしどうしてもガイアは外さないとダメだろうか。
 力がMAXの状態で気合いの乗ったカウンターを食らわすのが密かな楽しみなのに……
 第一、体力も魔力も全く育ててこなかった俺が魔法系のマガタマを装着したところで、覚えるスキルは片っ端から捨てるしかないのだ。ならば長所を生かしたマガタマで挑んだ方が──

ディース「わたくしの魔力は、テトラジャの為だけにあるのではありませんのに!
     いいでしょう、そんなにテトラジャを唱えて欲しいならば攻撃魔法なんて不要ですわね?
     そーれ、アギラオを二分の魔脈に変えてあげましてよ、ホホホホホ!!!!

 うわあああぁぁぁぁ、なんて事を!! 数少ない攻撃魔法の使い手がまた一人減ってしまった。
 ディースの意図に反してますます肉弾戦に偏るパーティー……火力が減って長期戦が見込まれる。泣く泣く俺はガイアをワダツミに付け替えるのだった。鬱。


 〜キウンの部屋〜

 キウンの後姿はこちらに向かっていたはずだが……目の前には廊下の左右に並ぶ、丸い扉。
 わざわざ袋小路に逃げ込む様には思えないが、先ほどまで閉まっていた鍵が全開になっているのが怪しい。つまりヤツはここのどこかに潜み、何らかの罠を張って俺を待ち構えているのだ。

 とはいえ、それに対抗する策など当然ない。ひとつひとつ中身を確かめていくことにしよう。まずは手前から順番に……

 いた。最初の部屋から思いっきりいた。

 よし、そこに直れヒトデ男。キーラを返せば逃がしてやらない事もないぞ。

キウン「残念だったな。俺はキウンだが、キーラを持ってるのは別のヤツだ」

 そんな言い訳が通用するか。有無を言わさず4人がかりでボコにする。
 しかし残念ながら、こいつはキーラを落とさなかった。

 むう、この様子だと他の部屋にも一体ずつ待ち構えていそうだな……ますます嫌がらせとしか思えない。全員ぶちのめして死ぬほど後悔させてやろうか。そんなことを思いながら隣の扉を開く。


 何か……三体いる。


キウン「俺が本物だ」

 そ、そうか。それは良かった。次の部屋に移るたびにどんどん増えていったらどうしようか、本気で悩みかけたぞ。

 しかし呪殺持ち三体はなかなかに厄介な相手だ。
 テトラジャ担当のディース、スタメンのキクリヒメ&アラハバキを召喚して立ち向かう。
 序盤、アラハバキには機をうかがうのに専念させ、テトラジャ・タルカジャ・ラクンダを念入りにかけていく。ムドはかなりの脅威だが、アラハバキの呪殺無効とテトラジャの効果で危機をしのぐ。補助魔法がかかり終わってからは早い。俺とアラハバキが突撃を開始すると、ものの数秒でキウンどもは敗れ去った。
 数が多くても、一体一体の耐久度が低い限り俺達の相手じゃない。反省しながら眠ってろ。

 よし、今度はきちんとキーラを入手できた。随分と時間を食ったな……急いで台座の間へ戻らないと。


<プレイヤーのつぶやき>
ディース造反。痛い、痛すぎます。・゚・(ノД`)・゚・。 思えばせっかくジオンガを覚えさせたキクリヒメも、魔脈に変えやがってました。いまやうちのパーティーで攻撃魔法と言ったら、マハブフのみorz もはや他の仲魔はカジャ&プレスターン要員です。アラハバキも使いづらいですが、彼はマスコットなのでOK

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