第二話 激闘! 決闘裁判!!


 トールとネプチューンマンとハイレグの関係性について小一時間考察している間に、檻に入れられた。罪状は「よそ者がデカイ顔してうろついたから」らしい。コロンゾン(顔面しかない)を連れ歩いていたのが良くなかったのだろうか。確かに顔がデカイしな、こいつ。

 受胎前は品行方正に生きてきた俺に投獄経験などあるはずもなく、手持ち無沙汰なままお呼びがかかるのを待った。両隣の独房にいる囚人が教えてくれたのだが、どうやら俺は法廷へと連れて行かれるらしい。
 ボルテクス界にも司法は存在した。一体どのような裁判光景が繰り広げられるのだろうか……こんなことになるなら「行列の出来る法○相談所」を毎週視聴しておくんだった。

 しばらくすると牢番がやってきて、俺に声をかけた。裁判の時間だ。牢番は俺を牢から出すと、廊下奥の部屋へ進むように指示した。俺は言われるがままに足を進めた。

 重厚な扉を開けると、真四角の殺風景な部屋に出た。これが裁判所? 傍聴人もいなければ裁判官の座席もない。足元には転々と血痕が認められた。裁判と流血沙汰に何の関連があるのだろう。

 逡巡している俺の前に、一匹の悪魔が現れた。双頭の獣、オルトロスだ。オルトロスは口を開くなり「死刑死刑!」とがなりたててくる。俺が自らを弁護しようとすると、遮るように奴は続けた。


「死刑ニ決定、死刑以外アリエナイ。オレ様ヲ満足サセル死ニ方ヲ考エロ!」


 なんてこった。最初に判決が下されるなんて思ってなかった。あれこれ考えていた釈明の言葉が吹っ飛ぶ。どこの不思議の国の裁判だ!
 ……いや、待てよ。どちらかと言えばこのボルテクス界は不思議の国に分類される気がする。ハートの女王流裁判をかまされてもおかしくは無い。むしろそっちが自然だ。常識を持ち出した自分の馬鹿さ加減がイヤになる。鬱だ。

 しかし満足させる死に方か。どうしよう。奴はマントラ軍の裁判官兼執行人。つまりマントラの流儀に生きる悪魔だ。マントラの流儀は「力こそ全て」だったはず。ならば俺が力を振り絞って戦うことで、彼の満足となるに違いない。

 見るとオルトロスは顎の端から炎をチロチロと吐き出しており、火炎系の悪魔である事が伺える。俺はマハブフを取得させておいたアメノウズメを呼び出して、オルトロスに挑んだ。



 ……困った事になった。俺の足元には、双頭の獣と半裸の鬼女が力なく転がっている。オルトロスに挑んだ俺はあっさりと彼を撃破してしまい、続いて現れた鬼女ヤクシニーも、やはり軍門に下してしまったのである。

 裁判官を二人もノシてしまったわけだが、俺はどうなるんだろう。先の展開を読めずに所在を無くしていると、とうとう大物が現れてしまった。
 ボルテクス界のパーフェクト超人、雷神トールだ(ウホッ、相変わらずいいハイレグ……)
 この男はマントラ軍のNo.2と裁判長を兼任していると言う。成る程、巨大ハンマーが裁判長らしさを醸し出している。きっと彼は現在、裁判をムチャクチャにされて怒り心頭に違いない。
 俺は、自分の空気読めなさ具合を呪った。

 が、予想に反してトールは至極冷静に語りかけてきた。
 手下二人を撃退した実力を見て自ら手合わせする気になったのだと、俺に告げる。
 ……成る程、マントラの幹部であるトールは、やはり「力が全て」と言いたいわけだ。そしてそれは法廷においても彼らの真理であり、弁護士も検事も存在しないのは要するに、「腕づくで無罪を勝ち取れ」ということなのだ。

 理解してしまえば、非常にシンプルだった。心の荷が下りると同時に、妙に落ち着いた気分になる。そう、元々こっちの方が「俺らしい」やり方だったじゃないか。祐子先生の事を聞くにも、小難しい交渉を持ちかけるつもりは更々なかった。降りかかる火の粉は素手で払い、火中に栗あらば拾いにいくのが、俺にはふさわしい。それに、相手はマントラ軍のNo.2だ。今までの悪魔とは段違いの実力を持つはず……俺は期待に高揚していくのを感じた。

 腹を決めて、戦いのパートナーとなる仲魔を呼び出す。タケミナカタ、モムノフ、そして相棒のハイピクシー。とことん攻撃に片寄った、守りを顧みない布陣だ。俺は耐久力が然程有るほうではない。トールの実力を見誤れば、即ちに死へ繋がるだろう。だが、これが俺の本気なのだ。殺られる前に殺る。そうそう実行できるスタイルではないが、最強の敵を前にするからこそ、本気を試してみたかった。

 俺の気配を察してか、トールは満足げに頷くとハンマーを高々と掲げた。戦闘開始の合図だ。

 オルトロスやヤクシニーを相手にした様に、適当に殴りかかりはしない。タケミナカタにタルカジャを唱えさせ、俺はピクシーと共にラクンダでトールの防御を殺いでいく。
 当のトールは、豪腕を唸らせてハンマーを叩きつけてきた。一撃が重い。意識をもっていかれそうになりつつも、俺は一切の反撃をせず、「準備」をすすめるのに専念した。
 ……手数よりも、有効なものがあるのだ。
 ラクンダとタルカジャをそれぞれ三度重ね終えて、行動に出る。
 力を溜めさせていたモムノフに突撃を命じ、その間に俺は気合いを溜める。モムノフは長槍を構えて、トール目掛けて一撃を繰り出す。凄まじい貫通力で、脇腹を貫かれる雷神。驚きと苦痛でうめき声を漏らす。
 だが瞬時に危機的な様相は消え去り、トールは槍を引き抜いて俺たちに向き直った。ムン、と気合いを入れると、その傷口があっという間に塞がる。

「面白い……ならばこちらも本気で参るとしよう」

 トールから発せられる圧迫感が、けた違いに強烈なものとなった。

 ……こちらも本気を見せるのは、これからだ。モムノフが一撃与える間に溜めていた力、破裂しそうなほど蓄えられたそれを、全身を爆発させるように開放する。モムノフに続いて俺が突撃するのを見止め、トールは防御の構えを取った。
 だが、俺とモムノフと同程度に考えたのは、失敗だったな──



 肉の爆ぜる音が響き、雷神の半身が吹き飛んだ。



 そして何が起こったのかトールが認識する前に、俺は身を翻してもう一度体当たりをぶちかました。かろうじて立ち尽くしていた雷神だが、二度目の衝撃に耐え切る事は出来ず、ズシンと音を立てて膝をつく。



 ──勝負は決して、俺は無罪放免となった。
 トールは俺のことを気に入ってくれたらしく、マントラ軍本営内を自由に出歩けるよう取り計らってくれた。思っていた以上にここの流儀は俺にしっくりときて、居心地がいい。
 次はいよいよNo.1のゴズテンノウに会いに行く事となった。勿論、挨拶はマントラ流になることだろうな。



<プレイヤーのつぶやき>
 何も攻略情報無しで挑んだ決闘裁判。ラクンダ+タルカジャをMAXにして、主人公が気合い→突撃、これの繰り返しで勝ち進みました。ラストのトールさんに1400ダメ叩き出せてウツダ君はご満悦です。

←BACK   NEXT→

■真女神転生3プレイ日記メニューに戻る■
■メガテンメニューに戻る■